小型軽水炉BWRX-300の概要

原子力

BWRX-300は日立GEが開発している出力30万kWの小型BWRです。

欧米を中心に認可され、建設計画が進んでいます。

日立GEの公式サイトによれば、以下のプロジェクトが正式に進行しているようです。

ダーリントン新原子力発電所プロジェクト
建設予定地:カナダ・オンタリオ州ダーリントン
完成予定:2028年

サスカチュワン州プロジェクト
建設予定地:カナダ・サスカチュワン州
完成予定:2030年代半ば

クリンチリバー・サイトプロジェクト
建設予定地:テネシー州オークリッジ近郊
完成予定:未定

また、ヨーロッパで認可・建設に向けて動き出しているようです。

欧州 BWRX-300の導入目指しWG発足(原子力産業新聞 2024年8月6日)

ポーランドのオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社は7月25日、EU加盟10か国とノルウェーにある17企業の協力を得て、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」の展開に向け、作業部会(WG)の設置を欧州SMR産業アライアンス(European Industrial Alliance on SMRs)に申請した。

英国 SMR導入支援で米GEH社らがMOU(原子力産業新聞 2024年9月25日)

米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は9月9日、エーコン社、アトキンス・リアリス社(旧SNC-ラバリン社)、ジェイコブス社、レイン・オルーク社の各社と、英国での小型モジュール炉(SMR)導入支援の了解覚書(MOU)を締結した。

BWRX-300の特徴は以下の通りです。

小型軽水炉 BWRX-300(原子力安全部会セミナー 2022年10月29日)

大きな特徴の一つは「隔離弁一体型原子炉」を採用したことにあります。これによりLOCA(冷却材喪失事故)リスクを減らすことができます。冷却材喪失事故とは原子炉内の水がなくなり、ウラン燃料を冷却することができなくなる事故です。原子炉圧力容器に隔離弁を直付けし、溶接部を無くすことで配管の大破断を回避し、事故の発生確率を大幅に減少させることができます(従来の隔離弁は格納容器壁を挟むように壁近傍に設置されており、原子炉圧力容器-格納容器間の配管は溶接で接続されていることから、溶接部での破断想定が必要)。

また、非常用復水器(ICS)は独立して3系統設置されています。そのため、1系統が自己破断、1系統が起動失敗したとしても、1系統が起動することで安全を確保することができます。これにより事故収束の成功率が大幅に向上します。このICSは静的安全系であり、電源・人的操作なしでも7日間冷却が可能です。7日経てば、ウラン燃料の崩壊熱は徐々に減少していきますので、発生熱量は大幅に低下しますし、この7日間で事故を収束させる準備(代替冷却ポンプの設置など)も整えることができます。

小型であるため、物量を大幅に低減でき、モジュール工法を採用することで建設期間を短縮化することが可能です。再エネの出力変動に対応するための負荷追従運転もできるようです。

具体的な建設プロジェクトも進んでおり、採用されている技術は概ね全て実証済みですので、今後が期待できる原子炉の一つとなりそうです。

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