コモンウェルス・フュージョン・システムズの特徴

新エネルギー

核融合スタートアップで最も資金を集めているのがコモンウェルス・フュージョン・システムズ(Commonwealth Fusion Systems)で、これまでに20億ドル(3000億円)集めています。同社は同社はマサチューセッツ工科大学(MIT)から派生したスタートアップです。

世界における核融合スタートアップの状況(エネルギー情報サイト 2025年1月2日)

コモンウェルス・フュージョン・システムズ社の計画は非常に野心的であり、2026年までに実証炉のSPARCを建設し、並行して初の商用発電炉となる出力40万キロワット級ARCの建設も計画しています。SPARCは米マサチューセッツ州デベンズにおいて建設中です。ARCについては、米バージニア州リッチモンド近郊に建設すると発表しており、30年代初めの発電開始を目指しているようです。

核融合炉、米CFSは「年100基建設」 日本は勝てるか(日本経済新聞 2024年3月14日)
2026年の稼働目指す、コモンウェルスの核融合施設へ行ってみた(MIT Technology Review 2024年11月12日)
「世界初」の商用核融合発電所、建設地はバージニア州 米ベンチャー発表(CNN 2024年12月19日)

核融合は未来の技術と言われ続けていますが、なかなか実現の見通しが立たず、ITERも計画延期が続いています。

コモンウェルス・フュージョン・システムズ社の強みはどこにあるのでしょうか?

ブレークスルーとなった技術について、コモンウェルス・フュージョン・システムズ社のCFS創業者兼CEOのボブ・マムガード氏は以下のように語っています。

未来を担う核融合エネルギー(Abdul Latif Jameel 2021年12月15日)

当社では、従来の基準を大幅に超える超高磁場を形成する強力なマグネットを開発することで、トカマク装置の大幅な小型・低コスト化を実現し、臨界プラズマ条件を達成できると考えました。
そこで、新しい高温超伝導体(HTS)を使用して、従来の核融合マグネットよりもサイズが大幅に小さく、強度の高いマグネットの開発に取り組みました。
その結果、HTSマグネットを適切な構成で開発することで、ITERの約40分の1のサイズのトカマク装置を作ることが可能になりました。このことは、核融合システムに飛躍的な変化をもたらします。

この「新しい高温超伝導体(HTS)」がキーとなる技術のようです。

Tests show high-temperature superconducting magnets are ready for fusion(MIT News 2024年3月4日)

記事によれば、従来の超伝導体は4K(約-270℃)の超低温を必要としていました。一方、この「新しい高温超伝導体(HTS)」では20Kの温度でも作動します。材料としては「レアアースバリウム銅酸化物」を用いています。これまでに20テスラの磁場強度を達成し、110MJのエネルギーを蓄えることができています。

この「新しい高温超伝導体(HTS)」を用いることで様々なイノベーションをもたらすことができるようです。その一つが、マグネット周りの断熱材を除去できることです。断熱材を除去することで、低電圧システム(low-voltage system)となり、製造プロセスやスケジュールを簡略化でき、他のシステム(冷却や補強のための構造物など)のためのスペースを確保できるメリットがあるとのことです。

コモンウェルス・フュージョン・システムズの動向については今後も注視していきます。

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