世界における石炭需給の状況

石炭は現時点で世界の貴重なエネルギー供給源ですが、地球温暖化の要因となる二酸化炭素を化石に燃料の中で最も排出しています。国連環境計画（UNEP）のレポートでは、2019年時点で化石燃料から排出される二酸化炭素の40%が石炭由来と評価されています。

温暖化ガスの排出源は何か？(エネルギー情報センター 2025年1月27日)

よって、カーボンニュートラルの観点から、徐々に石炭の消費量は減衰していくとが予想されます。

IEAが発行しているレポートをベースに調べてみました。2023年までが速報値、2024年は評価値、2025-2027年は見通しです。

Coal2024(IEA)

世界の石炭生産量と消費量は以下の通りです。

Table 1 世界の石炭消費量(Mt)

Table 2 世界の石炭生産量(Mt)

世界の石炭輸出入量は以下の通りです。

Table 3 世界の石炭輸入量(Mt)

Table 4 世界の石炭輸出量(Mt)

主要な国の状況は以下の通りです。

石炭生産国・消費国の現況（JOGMEC 2023年11月）

中国

中国の発電エネルギーは風力、太陽エネルギー等が急速に増加しているが、火力発電量も依然として増加傾向にある。発電設備も風力、太陽光が大幅に増加しているが、石炭火力も年間40GW前後増加している。
中国は近年、国内の石炭産業保護の目的から、石炭輸入量を年間3億トン程度に制限してきたが、2023年はエネルギー供給確保のため輸入枠の設定は実施せず、輸入量が大幅に増加している。

インド

最近になり国内炭の増産ペースが上昇したため、輸入量の増加は抑えられている。国内生産量は、2023年度には10億トンに達する見込みであり、今後増設を計画している石炭火力発電への供給確保のため、2027年度には14億トン、2030年度には15.8億トンへの増産を目標としている。
足元では電力需要の急増に対応するため再び石炭への投資が再開され、インド政府は2023年11月現在、新規石炭火力発電所を27GW建設中、25GWを計画中、更に30GW程度を追加し、今後5～7年間で80GW前後を増設する目標を示している。

米国

米国の石炭生産・消費量は、2008年に約12億ショートトン（約11億トン）に達したが、その後はシェール革命により天然ガス価格が下落したことにより、コスト競争力を失い急速に減少した。石炭火力発電量の減少を、天然ガスと再エネが補っている。

オーストラリア

豪州の石炭（一般炭、原料炭）生産量は、輸出需要の拡大に応じ増加してきたが、2014年以降は横ばい～減少傾向にある。

インドネシア

石炭国際市況低迷により、生産、輸出は2014～15年にかけ減少したが、2016年以降は、再度増加に転じた。
国内需要の回復や中国、インドへの輸出が増加し、2022年は生産量、輸出量共に過去最高となった。

ロシア

ロシアは、2010年以降輸出量の増加に合わせ、石炭生産量を増加させてきた。国内消費量は、ほぼ横ばいで推移している。2022年時点、約4億4千万トンを生産し、2億トン強を輸出している。

南アフリカ

年間2億5千万トン前後を生産する世界第7位の石炭生産国。生産される石炭の大半（2022年約98%）は一般炭。
生産される一般炭の7割弱(1億7千万トン前後)は国内消費され、約3割(７千万トン前後)は輸出される。世界第4位の一般炭輸出国となっている。

欧州

再エネによる発電量が増加する一方、石炭火力発電量は大幅に減少している。石炭及び褐炭火力の全発電量に占める比率は、2000年には30%であったものが、2021年には14%となっている。