三菱重工が開発している革新軽水炉SRZ-1200の開発はかなり進んでおり、電力会社も開発に前向きのようです。
三菱重工と電力4社が革新PWR共同開発(電気新聞 2022年10月3日)
三菱重工業は29日、120万キロワット級の革新軽水炉を、PWR(加圧水型軽水炉)を保有する北海道電力、関西電力、四国電力、九州電力と共同開発すると発表した。基本仕様の設定などの基本設計を行う。
2024年12月からは規制庁との議論も開始しています。
規制庁、革新軽水炉の論点整理へ/三菱重工製、実務レベルで検討(電気新聞 2024年12月10日)
原子力規制庁は9日、革新軽水炉の設計に対する規制上の論点を整理するための会合を初めて開いた。
今後1年程度かけて議論を進め、事業者から聴取した内容と合わせて原子力規制委員会に報告する。
SRZ-1200の特徴をまとめました。
電気出力はSRZ-1200の名前の通り、120万kWです。
SRZは以下のような意味を持っています。
S:Supreme Safety(超安全)、Sustainability(持続可能性)
R:Resilient(しなやかで強靭な)light water Reactor(軽水炉)
Z:Zero Carbon(CO2排出ゼロ)で社会に貢献する究極型(Z)
主な特徴は以下の通りです。
Supreme Safety(超安全)
地震、津波その他自然災害への耐性強化
岩盤に建屋を埋め込み耐震性を強化しています。また、基準津波に余裕を持った敷地高さ設定し、地上1階層は建屋水密化することで、浸水被害を防ぎます。
炉心冷却・放射性物質閉じ込め機能の強化
安全系設備は3トレン+SAトレンとしています。3トレンとは安全系設備(非常用発電機や注水設備など)を3系統保有し、冗長性を確保することで安全性を向上させます。例えば、非常用発電機を独立して3つ設置すれば、何らかの事故で1つが故障しても他の2つの発電機を用いて原子炉の冷却を継続することができます。SA関連設備(例えば、コアキャッチャなど)は1系統のみのようです。
溶融炉心対策としてはコアキャッチャを設置しています。これにより、炉心で溶融したウラン燃料(燃料デブリ)が圧力容器を突き破って格納容器に落下した場合においても、コアキャッチャで受け止めて冷却することで、原子炉全体の安全性を確保することが可能となります。
格納容器内の圧力が上昇し、減圧のために炉内の蒸気を外部に放出する場合においても、フィルタベントシステムを設置することでセシウム、よう素を除去することができます。さらに、蒸気を取り除いた放出ガスから、吸着材により希ガスを吸着させ分離することができます。
地球に優しく Zero Carbon & Sustainability
柔軟な運用性
再生可能エネルギーとの共存性を向上させるために、負荷追従性能の強化し、送電系統の負荷に対し柔軟に応答可能としています。風力発電や太陽光発電は風向きや日照条件によって発電量が大きく変動します。電力システムは発電量と需要量が常に同じである必要があり、再生可能エネルギーの発電量が増減すれば、他の発電システムがそれに合わせて発電量を調整する必要があります。従来は火力発電がその役割を担ってきましたが、SRZ-1200では原子力発電もこの発電量調整に寄与することができるようになります。
大規模な電気を安定供給 Resilient Light Water Reactor
更なる信頼性の向上
以下の3つの観点のデジタルツインを構築しプラントオペレーションをサポートし、信頼性・安全性を向上させています。
- Functional Twin:プロセスデータや各種設備センサからのデータを集約/分析/予測し、プラント異常状態/設備異常の予兆検知や、プラント運転をサポート
- Physical Twin:各種プラント内カメラ(定点/モバイル)からの機器状態等の情報を活用し、現場点検/検査のリモート化や三菱重工エンジニアによる遠隔支援をサポート
- Locational Twin:平時のタスク管理に加え、アクシデント対応時に必要な人員や物資/車両の位置情報管理等を同時に実施・共有し、最適な意思決定をサポート
稼働率向上の取組み
定期検査に係る作業の効率化によるプラント停止期間の短縮、並びに運転期間の長サイクル化により稼働率を向上することで、コストの低減を目指しています。原子炉は約1年に1回定期検査を実施する必要があります。この間は原子力発電が使えず、高コストな火力発電などで発電量を補う必要があります。SRZ-1200では標準設計として18ヵ月運転に対応し、最大24ヵ月運転まで対応可能な設計となっています。