革新軽水炉SRZ-1200の概要2

原子力

三菱重工が開発している革新軽水炉SRZ-1200の特徴をさらに掘り下げていきます。

少し古いですが、以下の資料を参考にまとめていきます。

革新軽水炉 SRZ-1200(原子力学会 2022年10月29日)

革新軽水炉SRZ-1200の特徴として、以下が挙げられています。

① 冷却・閉じ込め機能強化
② パッシブ安全設備の導入
③ 溶融炉心対策 ~ドライ型コアキャッチャー~
④ 放射性物質放出防止
⑤ 耐震性向上
⑥ 津波耐性等強化
⑦ 大型航空機衝突対策
⑧ セキュリティ高度化

① 冷却・閉じ込め機能強化

大きな変更点として、安全系設備(冷却するためのポンプや放射性物質を炉内に閉じ込める機能)を既設炉は2系列であったものを3系列にしています。何らかの理由(例えば地震や津波)で2系列の安全系設備が故障しても、残った1系列で原子炉事故に対応することができるので、より安全性が向上したと言えます。

さらにシビアアクシデント(SA)専用の区画を設け、SA対応設備(代替炉心注入ポンプ、格納容器再循環ユニットなど)を恒設化するようです。シビアアクシデントとは例えば福島第一原発事故のように炉心の燃料が溶融し、圧力容器や格納容器が破損する大規模な事故を意味します。

代替炉心注入ポンプとはSA時に炉心に水を注入するための特別なポンプです。格納容器再循環ユニットとは冷却コイルによって格納容器気相を自然循環で冷却します(水蒸気を凝縮させる)。凝縮水はコアキャッチャへ流入し、溶融デブリの冷却に利用されます。

SA対応設備を恒設化することで、可搬設備を簡略化したいという意図もあるようです。規制においても、十分な機能が確保できるのであれば、必ずしも可搬設備は必要とはされていないようです。恒設化した方が信頼性が高いというのが、三菱重工の意見のようです。ただし、柔軟性を確保するため可搬設備の接続も可能な構成となっています。

格納容器バイパス(放射性物質が格納容器を経由することなく環境に放出される事故)対策として、インターフェイスシステムLOCA(IS-LOCA)と蒸気発生器伝熱管破損(SGTR)についても対策がなされています。

② パッシブ安全設備の導入

パッシブ設備とは電源を必要とせず、プラントの状態に応じて自動作動する設備のことです。SRZ-1200では「高性能蓄圧タンク」を導入しています。従来の蓄圧注入は事故直後のみ大流量注水していましたが、「高性能蓄圧タンク」では事故の進展に応じてパッシブに大流量・小流量を切り替えて注入します。これにより低圧注入ポンプを削除可能としていますが、規制側がこの説明に納得するかが今後のポイントになるかもしれません。

③ 溶融炉心対策 ~ドライ型コアキャッチャー~

コアキャッチャーとは原子炉圧力容器から格納容器へ落下した溶融デブリ(溶融したウラン燃料)を耐熱材(酸化ジルコニウム性:耐熱温度2000℃)で受け止め、拡散槽へ流し込み冷却する仕組みです。拡散槽では溶融デブリが薄く広がることで、冷却しやすくなります。注水はデブリ拡がりを検知し、重力で自動注水できるようになっています。デブリ冷却を継続するための水は、格納容器再循環ユニットで冷却・凝縮された水が戻り続けるために、理論上は半永久的に冷却が可能となります。

ただ、デブリは必ずしもドロドロに溶けた流れやすい状態にあるとは限りませんので、拡散槽まで計画通りに流れてくれるかどうかは不明です。仮に拡散槽までの通路などで固化して留まった場合、その地点から浸食が進む可能性も懸念されます。今後もこの原子力安全分野での研究が進むことを期待しています。

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