ティーエーイー・テクノロジーズの特徴

新エネルギー

ティーエーイー・テクノロジーズ(TAE Technologies)はこれまでに12億ドル(1800億円)調達している有望な核融合スタートアップの一つです。

世界における核融合スタートアップの状況(エネルギー情報サイト 2025年1月2日)

TAE Technologies社の最大の特徴は、中性子を出さないホウ素を用いた核融合反応を採用しているところです。

従来の核融合反応は、以下の式に示すように、重水素(2D、陽子1と中性子1)と三重水素(3T、陽子1と中性子2)の反応となっています。この場合、ヘリウムと中性子が生成します。

中性子は炉の内壁などにぶつかると、その構造材は放射化(放射能を持つ)し、最終的には放射性廃棄物となります。また、炉が損傷する要因となるため、メンテナンスが必要となり発電コストが増大します。

TAE Technologies社は軽水素(p、陽子1)とホウ素(11B)の核融合反応を採用しています。

この場合、中性子は放出されず、構造材も放射化しません。ただ、10億℃以上の高温プラズマが必要となることが一つの大きな課題となっています(通常の核融合炉は1億℃程度)。

核融合科学研究所(核融合研)とTAE Technologies社の共同研究として、核融合研の大型ヘリカル装置(LHD)を用いて、磁場で閉じ込めたプラズマ中での軽水素とホウ素11の核融合反応が実証されています。本内容は、2023年2月21日にNature Communicationsに掲載されています。

先進的核融合燃料を使った核融合反応の実証(核融合科学研究所 2023年3月9日)

核融合科学研究所の小川国大准教授、大舘暁教授らと米国・TAE Technologies社のR. M. マギー博士、田島俊樹博士らの研究グループは、核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)において、磁場で閉じ込めたプラズマ中での軽水素とホウ素11の核融合反応を世界で初めて実証しました。

実証自体はヘリカル装置が用いられていますが、TAE Technologies社はビーム駆動の磁場反転配位(FRC:Field-reversed configuration)を採用しています。トカマク式に比べ弱い磁場で高圧力のプラズマを閉じ込め可能となるため、装置の小型化に寄与するとされています。一方で、磁場がゼロになる特異点が存在し、この点からプラズマが漏れること、FRC容器内の磁場は非線形かつ複雑なダイナミクスを呈し、制御が難しいことが課題とされています。

これまでTAE Technologies社は2017年に第5世代原子炉「ノーマン」によって、7500万度でプラズマ安定的に維持できることを証明しています。今後は、1億℃以上で動作する「コペルニクス」と呼ばれる実証施設を建設し、5年ほどかけて実用化に向けた試験を繰り返した後、ダヴィンチを開発する予定としています。

核融合の最大の問題の一つとされている炉壁の放射化問題を解決できるのであれば、非常に魅力的な技術に思えます。今後の開発が楽しみです。

【出典】
核融合技術をリードするTAE Technologies。コアとなる「FRC」とは(Advanced Technology X 2024年9月12日)
核融合発電を取り巻く足下の動向(みずほ銀行 2024年3月19日)
核技術スタートアップのTAE、ゼロエミッション、非放射性核融合エネルギーの商業化に向け約340億円を調達(ESG Journal 2022年7月25日)
ついに核融合発電が現実に、米TAEが2030年までの実用化を目指す(fabcrossエンジニア 2021年7月6日)

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