革新軽水炉iBRの概要

原子力

原発3大メーカーの一つ東芝においても、革新軽水炉iBRの開発が進んでいます。

iBRは電気出力135万kWの大型ABWRです。その他の革新軽水炉と同様に、安全性が追及されており、再生可能エネルギーとの共存を考慮して、負荷追従運転ができるようになっています。

新規制基準への適合だけでなく、緊急避難不要、長期移住不要、外部支援なしで7日間のグレースピリオド(運転員操作不要期間)を達成しているとしています。

安全性については以下の特徴を持っています。

航空機衝突(Ari Plane Crash:APC)対策
原子炉建屋が鋼板コンクリート(SC)構造のドームで厳重に守られており、航空機衝突を含む様々な自然災害にも耐えうるとしています。

静的冷却系システム
静的メカニズム(重力、圧力差、密度差などにより、人が操作しなくても機能する仕組み)を取り入れた冷却システムを導入しています。静的原子炉冷却系(PRCS)および静的格納容器冷却系(PCCS)があります。

静的原子炉冷却系(PRCS)では原子炉圧力容器内で発生した蒸気を熱交換器を介して上部プールで凝縮し、その凝縮水を原子炉内へ静的に注水するシステムです。交流電源が喪失しても7日間冷却できます。

静的格納容器冷却系(PCCS)も同様に、格納容器内で発生した蒸気を熱交換器を介して上部のプールで凝縮させ、その凝縮水をPCVに静的に注水するシステムです。

二重円筒格納容器
シビアアクシデント時に発生する水素や放射性物質を、大容量の空間に静的に閉じ込め、格納容器ベントが不要となっています。容積は従来のABWRの2倍となっており、過圧破損を防止しています。また、二重円筒構造により耐震性も向上しています。

コアキャッチャー
原子炉容器から溶け落ちたデブリを格納容器でキャッチし、静的メカニズムで冷却する仕組みを備えています。

格納容器内蔵型静的放射のフィルタ系(IFVS)
二重円筒部に設置し、フィルタを介して放射性物質を閉じ込めています。これらの放射性物質(粒子状)はIFVSタンクに捕集されます。

また、iBRでは「安全性」のほかに「実現性」「経済性」をその特徴として挙げています。

「実現性」としては、これまで実績のあるABWRに基づくことで、これまでの東芝のノウハウが継承されることで、不確定な要素が低減されるとしています。また、コンパクトで運転しやすい中央制御室を提供することで、非常時にも健全かつシームレスに機能し続けられるように設計されています。

「経済性」としては、ABWRの特徴であるインターナルポンプ(RIP)の採用することで、大口径の外部再循環配管が不要となり、シンプルな設計となる点を挙げています。また、「安全性」の向上で必要な様々な設備は既設炉に追加するよりも、新しい炉にビルトインで設置した方がより合理的であるとしています。

iBRは従来のABWRを改良し、より安全かつ経済的な原子炉になっていると言えます。これまで実績のある技術を用いているため実現性も高そうです。

【参考】
革新軽水炉 iBR

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